そしていつものようにそのパックをカゴに入れたら、別の卵を宣伝している売り子の女性に捕まってしまった。売っているのは白玉だし、僕としてはこそっと横を通りたかったんだけれどね。彼女のセールスに対する姿勢は真っ直ぐで、大阪のおば様のように強引だった。
学生の時にアメリカ産の牛肉を同じように売ったことを思い出した。食べたことがないのに、柔らかいですよとか、脂がのっておいしいですよとか言うように指示された。なんだか釈然としない嫌な感じ。
その日、自分のお金を払ってその牛肉を買って家で食べた。おいしかったので、ほっとした。
でも、あの日の僕とは違って、きっと彼女は実際に食べて、別の卵と味比べもしていて、その卵がおいしいと本当に思っているのだ。その自信が真摯さ、強引さに表れているのだ。
僕は赤玉パックを元に戻し、彼女が勧める卵をカゴに入れた。




微量ながら毒性がありますので、さらっと軽く読んでください。